小さな隊長さんたち★第二話「理解する(後編)」




天気は晴れ。
日番谷が隊長就任してから、一か月ほどが経った。
あれから、十番隊はみるみる他隊との差を狭めていった。
活気の満ちた隊舎は、皆、隊長を敬い、何事も円満にいっていた…

が、その裏では、市丸の悪戯が続いていたのはまた別の話であった。

あれからの市丸の悪戯は、日番谷が一人のときに行われていた。
…まぁ、その内容はとってもせせこましいのだが。
例えば、日番谷が食堂で昼食をとっていると、市丸が突然現れ、一緒に昼食を取り始めたと思ったら、


「これ、嫌いやねん。あげるわ。」


とか言って、日番谷のお皿の中に、ピーマンやらシイタケやらを入れてきたりする。
別に、好き嫌いが激しくない日番谷にはどうってことない嫌がらせだった。
それから、日番谷の好きな食べ物と嫌いな食べ物を知った市丸は、日番谷の嫌いな食べ物が干し柿だということで、好物が干し柿の市丸は、ちょっと腹が立って、十番隊主室に保管されている日番谷の好物の甘納豆を全部、市丸特製干し柿に変えるという悪戯もした。
しかし、干し柿は松本の好物でもあるので、松本が喜んで消費したらしい。
それから幾つもの悪戯をしていたが、微々たるもので、本当に困るような悪戯はしなかった。
市丸だって、されど隊長、嫌いな?ヤツにだって、本当に困る事はしないのだ。
そんな二人を見ていた他の隊長達は、


(市丸は好きな子に意地悪している子供みたいだなー。)


と思っているのであった。





話は今に戻って、ここは三番隊長の自室。


「今日は十番隊と合同任務の日やなぁ…。」


と目を覚ました市丸の第一声。
そう、今日は待ちに待った?十番隊との合同任務である。


「それにしても、十番隊長さんは我慢強いよなぁ…。」


と独り言を言いながら市丸は着替えを始める。


(あんなだけ意地悪したったのに、本気で怒らんし…)


市丸の当初の計画だと、日番谷にみっちり付きまとって些細な嫌がらせをしてやれば、本気で怒って斬合いにでもなって、市丸が勝利し、ギャフンと言わす。
という計画をしていたようだ。
しかし、実際には、日番谷が我を忘れて剣を抜く、という事はなく、別段、市丸の悪戯などなんとも思っていないようだ。
逆に楽しんでいるようである。


(僕かて、本当はもっと…)


市丸の中で、少しだけ日番谷の印象が変わってきたようであった。


「あっ、はよ支度せな!」


と言って、朝の集合に間に合うよう支度をしていた。(珍しく)





集合場所にて、日番谷率いる十番隊は全員が集合時間前にきっちりと列を乱すことなく並んでいた。
十番隊は、統率力ある日番谷のまじめさがにじみ出る、厳格な隊になりつつあった。
そして、日番谷十番隊始めての、大きな任務に、十番隊全員が嬉々とした気持ちなのは言うまでもない。
日番谷自身も、隊士達の信頼を確実なものにするためのいいチャンスでもある。
…しかし、この大事な任務に市丸率いる三番隊と一緒とは…ちょっと不安も感じてはいた。


「ギンのやつ遅いですね〜。集合時間まであと五分もないですよ。…まぁ、いつものことですが。」


「…やっぱり市丸は時間通りに来ないものなのか。あいつらしいけど。」


「まぁ、吉良がいるから、何とか合同任務の時は相手方に迷惑はかけてないみたいですけど、いつもギリギリ到着みたいで…」


「…そうか。」


「それにしても、ギンはよく隊長務まってますよね…て、ようやくお出ましですね。」


「ギリギリ時間前にきたな。」


そんな十番隊主従の会話が広げられていると、市丸三番隊がやってきた。
…こういう仕事のときはせめて集合時間10分前に来るのが普通なのだが。


「十番隊の皆さん、おはようさん。準備万端で来たで〜。」


「おはようございます。集合時間ぎりぎりで申し訳ございません。」


市丸はあっけらかんとして挨拶をするが、吉良を含む他の三番隊員達は申し訳なさそうにしている。


(隊主があんな感じなのに、三番隊員は堅実そうなやつばかりなんだな…。そういえば、三番隊全体では悪い噂は一切ないな…。)


とその様子を見て日番谷は思った。
そして、両隊そろったので、松本と吉良が双方の隊員の前で、今回の任務の確認と現世へ降り立つための順番を説明し始めた。
そんな中市丸が日番谷の近くに歩み寄った。


「おはようさん、十番隊長さん。…十番隊長さんは今日も気難しそうな顔してはるなー。」


「…おはよう。お前は今日も緊張感のない奴だな。」


「はははー。緊張するほどでもないやん。」


「…お前はそうかもしれないが、おれにとっては隊長になって初の大規模任務だ。緊張はする。」


「う〜ん、まぁ、そうやけど。でも君も隊長になるだけの器や。大事なもんは守れる力はもっとる。」


「…まぁ、そうだが。」


「ははは〜。でも、僕の一番は自分の命やからね〜。」


「…お前なぁ…。まぁいい、今回はよろしく頼む。」


「うん。こちらこそ。…大丈夫やで、迷惑はかけへんから。」


初っ端から厭味は言うものの、さすがの市丸も仕事となるといつもの掴み所のない雰囲気はなく、一つの隊をまとめる隊長になっていた。
…緊張感は皆無みたいだが。
剣技が抜群の市丸はデスクワークより戦闘を好む。
三番隊の隊士達のほとんどが市丸の剣さばきに憧れ、敬意を抱いている。
最初、三番隊に配属された隊員はあんな悪ガキかつ我が儘で有名な人物を隊長と認めていない事も多い。
しかし、たった一回でも市丸と一緒に戦闘に参加すると、虜になってしまうのだ。
華奢な体から繰り広げられる美しい剣さばき。時には返り血を浴びた姿に畏怖を感じることもあるが、ただただ美しい太刀筋だった。


「市丸隊長、準備ができました。」


「日番谷隊長、十番隊も大丈夫でーす!」


両副隊長のオッケーサインの合図がでた。


「じゃ、行きましょか。改めまして、よろしく頼みますわ。」


「あぁ。…こちらも迷惑はかけないようにする。」


「解錠」という言葉で現世に向かった。





今回の任務は、大量の低級虚を倒す、という簡単な内容だ。
隊員達も予想されている虚は難なく倒せると思われた。
ただ、数の多い虚が厄介だ、というのと、隊士達が隊長格と一緒の任務に就く経験を積ませることに意味があるため、隊長格が直々に任務に参加するのだ。
そして親米隊長の日番谷が早くも合同で他隊と任務を行うのは、連携を深めるためでもあるが、大規模任務にあたるお手本として先輩隊長の隊が同行、という意味もある。


「じゃー皆、位置についてなー。いつもどおりお願いするわ。」


「はい!!」


現世に皆が降り立ったのを確認して、市丸がいつものように、のほほーんと効果音がつきそうな様子で言った。
三番隊員はその合図で予想される虚出現区域に散らばった。
そして、十番隊も日番谷の号令で皆が位置についた。
虚出現が予想される時間はおおよその時間なだけに、早い時も遅い時もある。
どの任務でも、時間よりずいぶん前に定位置につくのが基本で、予想よりかなりの時間がたって、虚が出現、という時もある。

十二番隊・技術開発局が総力をあげて、時間の誤差をなくそうと全力を尽くしているため、近年は誤差が少なくなり、安全に任務が行えるようになっていた。 そのため、合同任務など、他隊との連携力を高める任務が最近では多くなっていたりする。
今回は両隊長格そろって参加だが、簡単な任務のはずだった。


「…。」


「どうされましたか?」


「…なーんか嫌な予感するわ。」


市丸が神妙な面持ちで言った。
そんな普段と違う面持ちになった市丸に、吉良は少し胸騒ぎがする。
こういうときの市丸の勘はよく働くのだ。


「えっ!?」


「…今年の新人さんは三席の班が一番多かったよな?」


「はい。」


「う〜ん、ちょぉ心配やから、僕、あそこに混ざってくるわ。イヅル一人で大丈夫やんな?」


「あっ…はい、分かりました。」


「任せたで〜。…そういうことで、ここらへん危なくなったら、十番隊長さん方、よろしく頼みます〜!」


そんな急なことを言って、市丸は事前に決めてあった定位置から数百メートル離れた場所へ向かった。


「はぁぁぁ!?おい、市丸、どこに行く?」


「ちょっと先に行ってくる〜!十番隊長さん頑張ってなぁー!」


「おい、ちょっ…!」


急な出来事に、日番谷含む三番隊員も動揺したが、大量の虚の気配を感じ、一瞬で緊張感が走った。


「まぁいい。皆、かまえろ!」


日番谷の声と同時に、虚が出現し始めた。





低級虚のため、新人隊士も怪我をすることなく、円滑に任務が遂行されていた。
しかし、時間がたつにつれ、予想されていた虚より、ずいぶん手強いのが混じってきていた。


「おい、松本!あっちの方に巨大虚が現れたって、本当か!?」


「はい!でも、市丸隊長がいらしたため、無事だとのことです!」


「…!そうか、分かった。」


日番谷がいる区域には予想されていた虚の出現ですんでいるが、他の箇所では徐々に、巨大虚が現れているみたいだ。


(ちぃっ。市丸が行った辺りに巨大虚が大量に出現しそうだ…。)


数百メートル先一帯に重い霊圧がかかっていた。
あれだけの、霊圧になってくると、市丸がいるとしても、他の隊士に怪我人が続出しそうだった。


「松本!ここは任せた!俺は、あっちに応戦に行ってくる!!」


「分かりました!お気をつけて!」


当初から時を見計らって、各班に分かれた場所に隊長が直々に応戦に行く予定になっていたが、そんな事は言っていられない状況になった。
死と隣り合わせの仕事だけに、予定などないに等しいが、最初の大規模任務で日番谷は死人を出すなどは避けたかった。


(やはり、戦場慣れした市丸はすごいんだな…。)


瞬歩で移動し目的の場所を目前に、巨大虚を目の端でとらえながら、日番谷は思った。
そして、刀を握りなおした。
周りの温度が一気に下がり、天空は黒い雲が支配しだす。


「霜天に坐せ 氷輪丸!!」


氷の竜が巨大虚目掛けて天を駆け巡った。
空中で大分、大量の巨大虚達が凍り散っていったが、まだまだ続々と出てくる、隊員達の安全を考えると、むやみやたらと始解できない。


「皆、一旦この場から離れろ!」


日番谷の叫びで、この場にいた両隊員は虚を蹴散らしながら、日番谷から距離をとった。


(…市丸は応戦場所を変えたか。)


市丸の霊圧を違う場所で感じとりながら、隊員達が一定の距離をとったのを確認し、再び日番谷は始解をした。





「なんとか終わったなー。」


「あぁ。」


両隊長が本気で虚達を蹴散らしたため、なんとか虚を一通り倒すことができた。
怪我人は続出したが、大概軽傷で済んでいるので、応急処置に両副隊長が指揮をとって行っていた。
両隊長はそれを眺めながら並んで辺りにまだ虚がでないか気を配っていた。


「それにしても、三番隊が大規模任務によく指名されるわけが分かった。」


「えぇ〜?僕の隊って、大規模任務多かったん?…あっ、そういえば、何となく多いかも。」


「おいおい、合同任務に関しても五番隊と一緒につい2週間前に行ってたろ。結構、稀なんだぜ、こういう任務は。」


「あぁ〜そういえば、藍染のおっちゃんめっちゃキモかったわ〜。それよか、合同任務って稀やったん?」


「…そうだよ。(あえて藍染キモイ発言はスルー)隊長同士の気が合わないと、隊員同士でも争い事が起こるからな。合同演習ならまだいいが、任務になってくると話が違う。」


「はぁ、そういうもんなんか。まぁ、僕は戦闘に出れたらそれでええけど。」


「…お前が更木と仲が良いのがなんとなくわかる。」


「うん、剣ちゃんとは悪友や。そんな事よりも、十番隊長さんの氷輪丸、かっこよかったわー。竜って!」


市丸は自分の話をするのが嫌なのか、日番谷が最初に言いたかったことを市丸の話術でそらされてしまっていた。


(まぁ、本人に言ったら、さっきのことが嘘のようになってしまうから、心のうちにとめておこう。)


そう思う日番谷だった。
両隊は怪我人の応急処置がだいたい完了したみたいだ。


「日番谷隊長〜、十番隊はだいたいオッケー…」


「きゃゃゃゃゃゃーーーーー」


松本が数十メートル離れた場所から大声で日番谷に叫んでいる途中だった。
突然、巨大虚が出現し、近くにいた隊士達が悲鳴を上げた。
巨大虚が十番隊の怪我人が集まっている場所に襲いかかろうとしていた。


「ちぃっ、霊圧を消す虚かっ!!!」


日番谷は瞬歩で襲われかけている隊員のもとへ向かった。
うまく松本がカバーして第一打は防げたみたいだが、逃げ遅れた一人の隊士が大虚に襲われかけていた。


(ここで始解はできない!斬るにしても間に合わない!俺がこいつを庇ったら、命は助かる!後は松本が何とかするだろう!)


日番谷は瞬時にそう判断し、虚の攻撃を受けようとしている隊士を庇うため、飛び込んだ。
隊士と虚の間に入り込んだが、到底剣で虚の攻撃を受け止められる時間もなく、生身で攻撃を受ける体制だった。
日番谷は目を固くつむってくるであろう痛みに備えた。



「射殺せ 神鎗」



市丸の声が遠くから聞こえた。
日番谷は目を開けると、目の前にいた虚は串刺しにされており、断末魔を叫びながら消滅しつつあった。
バッと、横に目を向けると市丸が瞬歩で日番谷のそばに来た。
市丸は隊士の方に顔が向いており、日番谷からは見えなかった。


「君、早く乱菊のところに行き。ここら辺はまだ虚がでるかもしれへん。早く瀞霊廷に帰って手当せんと。」


「は、はいっ!日番谷隊長、市丸隊長、ありがとうございましたっ!!」


まだ状況をよく飲み込めていなかった隊士だったが、さっきまでの穏やかな市丸とは違う何かを感じ、深々と頭を下げお礼を言って去っていった。


「すまなかった、迷惑を掛けた。」


大事に至らなかった隊士が去っていくのを見ながら、安堵の気持ちでほっとした日番谷は市丸に謝罪を入れた。
だが、市丸はいつまでたっても、いつもの気の抜けた声が返ってくることはなく、嫌みの一つでも返してくると思っていた日番谷は不思議に思った。


「おい、市丸、どうし…


「何やっとるんや!!自分、下手すると命落とすところやないかっ!!」


下を向いていた市丸が顔を上げ、いきなり、叫び声に近い大声で怒鳴った。
日番谷は最初こそ驚いたが、市丸の言ったことを理解し、腹が立った。


「何やってるって、おれは部下を助けようとしただけだ!当り前だろう!!おれだったら、怪我だけで済む!命は落とさない!」


日番谷も怒鳴り返した。
助けてくれたのは感謝するが、自分の行動に「何をしている」とは聞き捨てならない。


「何言っとるんや!せっかく十番隊が軌道に乗った時に、その頂点が大怪我をしてどないするねん!」


「確かにそうだが、目の前で救えるものを救うのは当たり前だ!」


市丸の言うことも一理あるが、日番谷にあの隊士を見殺しにしろというのか。
日番谷が怒りで今にも飛びかかろうとしているのを見て、市丸は少し冷静さを取り戻したのか、怒声から諭すような声に変った。


「君は、隊長としての意味を履き違えてないか?新人隊員にしても、死神になると決めた時点で、命を捨てる覚悟はしとるはずや。 自分の失敗で、隊長の命を危険にさらすなんて、絶対にしてはいけないことや、とも分かっとる。」


「でもっ…!」


「十番隊は長らく隊長が空席やった。それがやっと隊長にふさわしい人物が現れたんや。十番隊のこれまでの苦労を考えると、君はここでけがをすることも、ましてや命を落とすなんて、言語道断や。」


「…ここで、おれは死んでいく部下を見ていればよかったというのか?」


日番谷は市丸の言っていることはすべて承知できるが、ここだけは譲れなかった。
新米で、戦場に関しても書類処理にしてもまだまだ上に立つ者として未熟な日番谷を快く受け入れてくれた十番隊だ。
それに、日番谷が隊長になることを心待ちにしてくれた者も数多くいる。
そんな心優しい十番隊士を絶対に守ろうと決めたのだ。
自分の部下が死ぬより、自分が怪我をした方がましだ。
十番隊にかなりのダメージを与える結果になっても、命より大切なものはない。


「君は何もわかっとらんな。氷輪丸やったら、他の子もあの子も巻き沿いになると思って飛び込んだんやろうけど、何で僕が今日、ここにおると思ってるんや?さっきみたいに、僕やったら、神鎗で殺れる。」


「……………っ!!!」


「僕かて、隊長や。目の前で救える命やったら、いくらでも救うよ。やけどな、無茶はせん。」


市丸は穏やかな声で日番谷に話しかけた。
目の前にいるのは、隊長ではあるが、まだまだ未熟な新参者である。
日番谷の行動は確かに頷けるものである。
市丸だって日番谷の立場だったら助けたいと思う。
しかし、自分の命の重さを知らなくてはならない。
上に立つ者として、それは今後長く隊長を続けたいなら、理解しなければならない。

市丸の真剣な眼差しに、日番谷もようやく冷静さを取り戻し、自分の言動に恥じた。
市丸が同行したのは、三番隊と十番隊との連携を深めるだけではないのだ。
こういう状況の時にすぐさま、対応できるからいるのだ。
現に、市丸が虚出現の前に危険を察知して迅速な行動をしたおかげで、隊士達に死人が出なかったようなものだ。


「…すまなかった。」


日番谷は市丸に本日二度目の謝罪を言った。
やはり、市丸は長く隊長をしているのだ。
市丸を外面だけしか知らないやつらが言うことなど当てにはならないのだ。
それを一番よく分かっている自分がそれに少なからず乗せられていたのだ。


「うん、分かればええんよ。」


「…あぁ。隊長になりしもの、命、瀞霊廷に捧ぐこと。1より1000を選べ、そういうことだろ…。」


「君は1000以上に救える人物やで。…辛いのは分かるけどな。」


「…お前は強いんだな…。」


「そうでもないで。



でも、十番隊長さん…」



市丸はこれまでに見たことない射ぬく眼差しで日番谷を見ていた。
日番谷は、ドキッとした。
いや、ゾクッと何か、怖いものを見たかのように感じた。


(…これは本当に市丸なのだろうか?)


しかし、いっこうに言葉を続けない市丸に日番谷は痺れを切らした。


「…何だよ?」


「…やっぱりええわ。それよりも、早く戻らんと。他のみんなの怪我が心配や。」


そう言って、市丸は踵を返した。
すぐさま、いつもの市丸の雰囲気に変わったことで、さっきの異様な雰囲気の市丸が幻のようだった。
日番谷は思った。


(そうか…。市丸という人物は隊長という名にふさわしい、大人なんだ。)


そう、三番隊士がなぜ、市丸を敬愛しているのかが本当の意味で分かった。
剣技云々よりも、もっと隊長としての器のでかさに敬意しているのではないのだろうか。


踵を返し、目前に隊士達の安堵した表情を見ながら、市丸も思った。


(十番隊長さんは、普段は大人びてるのに、結構未熟な面があるんやな…。危なっかしくて、見とれんわ。)


すぐさま十番隊士達に認められて、根が真面目でとても部下に思いやりがあり、そこら辺にいる大人より大人な日番谷だが、少しだけ子どもであると思わせる面を市丸は垣間見た気がした。


そして、この合同任務をきっかけに、二人の互いへの考え方が変わったのは言うまでもなかった。


(…借りができたな。だが、もう少しガキっぽい行いは自重してほしいものだ。)


(…あぁ〜今度会うとき会いづらいわ〜。どないしよ。)


瀞霊廷への帰り道、無言な二人はこんな事を考えているのだった。








戦闘シーンなんて書けません。詳しくは、想像してください。(ぉぃ)

いやぁ〜市丸さんは小さいけど、本気を出すとかっこいいと思うんですね。
まっ、普段の大人の市丸さんはヘタレが日常ですが!
小さい市丸さんはヘタレではなく、悪戯好き、そういう感じだと思ってます。

感想など頂けると嬉しいです。

09.3/25〜4/16(拍手にて)